正法寺は天平勝宝六(七五四)年、奈良唐招提寺を創建した鑑真和上の高弟、智威大徳が修行した坊として始まった。弘仁(八一〇~八二四)年間に弘法大師空海が入寺し、「聖観世音菩薩立像」を彫刻したことが伝わる。「応仁の乱(一四六七~一四七七)」の戦火に焼失したが、元和元(一六一五)年に、恵雲律師、徴円律師により再興。元禄年間(一六八〇〜一七〇三)には江戸幕府五代将軍徳川綱吉の生母・桂昌院の帰依を得て、徳川家代々の祈願所となったことで知られる。
境内に入ってすぐ右手の赤い「遍照塔」は「六角の塔」で、日清日露戦争の戦没者慰霊のために、京都市が明治四十一年、高台寺に建てた後に同寺に移転された。亀岡建築の亀岡末吉技師が、鎌倉、室町の建物の雰囲気を取り入れたチタン葺の六角二重塔で、京都市指定有形文化財。
本尊は木造「三面千手観世音菩薩」。顔の両側に別の顔(化仏)がある三面形式で、左右の顔は過去と未来にも目を配ろうという意味があり、国指定重要文化財。他に、「春日不動」や、敬愛和合の「愛染明王」(室町時代作)、「春日稲荷尊」「薬師如来」「阿弥陀如来」など。聖観世音菩薩は弘法大師の作と伝わる。大原野大黒天は通称走り大黒天といわれ、一刻でも早く福を授けようと走っているお姿が珍しい。
通称「石の寺」と呼ばれる。境内全体で二百トンに及ぶ巨岩が全国各地から集められていることに由来。庭園のなかでも「宝生苑」は東山連峰を望む借景式枯山水庭園で、堂の畳に座して眺めると、庭石の形がカエル、モグラ、鳥やペンギン、ウサギなど十六種類の動物の形に似ていることから「鳥獣の石庭」と呼ばれている。どれだけ動物を見つけられるか、親子で、友だちで競争するのも楽しい。
住職のたっての要請で、死の直前まで病と闘いながら描き上げた画家・西井佐代子さん(享年五十二歳)の襖絵十七枚も見どころ。書院などの計四十一枚の創作を始めて間もなく、末期がんの診断を受けたが、大原野の山並みの風情を描いた「西山讃歌」が絶筆となった。
節分厄除開運祈願祭 2月3日
花まつり 4月上旬
施餓鬼会・千燈供養 8月中旬
紅葉まつり 11月中旬
不動護摩供 毎月8月
石庭(通年、特に4月上旬)
梅林(2~3月)
稲荷殿周辺(11月中旬)
JR「日向町駅」「桂川駅」、阪急「桂駅」「洛西口駅」「東日向駅」からタクシー15分。
京都縦貫道「大原野IC」「水掛IC」より南へ5~10分